top of page
執筆者の写真ZAF

マインドフルネス瞑想の効果と脳に与える影響とは?脳科学的な視点から解説

モダンな場所で佇む女性の顔

マインドフルネス(Mindfulness)とは、「今ここ」に集中する精神状態を意識的につくることを意味します。

マインドフルネス瞑想は、ビジネスマンにも多く利用されており、Apple創業者のスティーブ・ジョブズやMicrosoft創業者のビル・ゲイツも実践していると話題になりました。


この記事では、マインドフルネス瞑想が脳に与える影響とマインドフルネス瞑想の効果について脳科学的視点からわかりやすく紹介します。


マインドフルネス瞑想の効果とそのメカニズムについて詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。



マインドフルネス瞑想とは?


「マインドフルネス瞑想って何?」「マインドフルネスってどういう意味?」と感じる方は多いのではないでしょうか。


ここでは、マインドフルネスとは何か、マインドフルネスの種類について解説します。


モダンな部屋でクッションを使って瞑想をする女性


 マインドフルネスとは


マインドフルネスとは、マインドフルネス学会により「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること[1] 」と定義されています。


「ただ観る」とは、見る(視覚)・聴く(聴覚)・嗅ぐ(嗅覚)・味わう(味覚)・触れる(触覚)といった五感を通じて得られた刺激から生じる心の働きも観察することを意味します[2] 。


人が不安や焦りなどの感情にとらわれるとき、「今ここ」ではなく、過去や将来に意識が向いていることが多いものです。


過去の出来事について怒りや将来のことに不安にとらわれて繰り返し考えることを「反芻(はんすう)」と呼びます。


反芻することにより怒りや不安はさらに大きくなり、私たちを苦しめます。


強い怒りや不安などの感情を感じ続けていると、莫大なエネルギーを消費し疲れ果ててしまい、最終的にはうつ状態などの精神的不調を引き起こすのです。


「今ここに意識を向けること」と「ただ観る」ことにより、将来への不安や焦り、過去の出来事への怒りや落ち込みなどの感情をそのまま受け入れ、うつ状態などの精神的不調を予防するのに役立ちます。


 マインドフルネスの種類


マインドフルネスには、以下のような種類があります。


●     マインドフルネス瞑想

●     マインドフルネスストレス低減法

●     マインドフルネス認知行動療法


マインドフルネス瞑想をもとにジョン・カバット・ジンが開発したプログラムが「マインドフルネスストレス低減法(MBSR:Mindfulness-Based Stress Reduction)」です。


マインドフルネスストレス低減法は8週間のプログラムで、その効果が科学的に証明されたことにより、さまざまな医療機関などでストレスの低減や慢性的な身体の痛み、うつ病の再発予防、不安やパニック症の治療などに活用されるようになりました。


マインドフルネスストレス低減法と認知行動療法を組み合わせたものが「マインドフルネス認知行動療法(MBCT:Mindfulness-Based Cognitive Therapy)」と呼ばれ、うつ病などの心の病を持つ方にも行われる治療として活用されています。


2007年にGoogle社で「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY:Search Inside Yourself)」が開発され、ビジネス界でも注目を集めるようになってきました。


ビジネスの場では、ストレスマネジメントや仕事の生産性向上などの目的で活用されています。



マインドフルネス瞑想が脳に与える影響


マインドフルネス瞑想は人間の脳にどのような影響を与えるのでしょうか。

ここでは、マインドフルネス瞑想が脳に与える影響について解説します。

脳内が整理される様子のイラスト

 マインドフルネスは脳の灰白質を増加させる


2010年にマサチューセッツ総合病院とハーバード・メディカルスクールなどが実施した「マインドフルネスの実践は脳の灰白質を増加させる(Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density)」という研究で、マインドフルネスが脳に与える影響が明らかになりました。


この研究では、被験者に8週間にわたりマインドフルネスストレス低減法を実施したところ、脳の灰白質(brain gray matter)の体積が増加したとの結果が得られました。


マインドフルネスストレス低減法の脳科学的な効果が証明されたのです。


 海馬の灰白質の増加はストレス低減や感情の安定をもたらす


脳の灰白質とは、脳などの中枢神経の中にある神経細胞が密集している部位のことです。


うつ病やPTSDの方は、脳の中にある「海馬(かいば)」と呼ばれる部位の体積が減少してしまうケースが多いことが明らかになっています。


海馬は記憶だけでなく感情の調整にも関連しているため、海馬の灰白質の体積が増えるとストレスが減り、感情が安定するといわれています。


つまり、前述した研究で脳の灰白質の体積が増加したことが明らかになったことにより、マインドフルネスストレス低減法はストレスを減らしたり、感情を安定させたりする効果が期待できることが脳科学的にも証明されたのです。

 

 扁桃体の灰白質減少はストレスへ過剰反応を減らす


さらに、「ストレス低減が扁桃体の構造変化に関わる(Stress reduction correlates with structural changes in the amygdala)」の研究報告によるとマインドフルネスストレス低減法が脳にある扁桃体の灰白質を減少させることも明らかになりました。

さらにストレスレベルが減少した方ほど扁桃体の体積について減少度合いが大きかったと報告されています。


脳の扁桃体とは、感情(情動)の中枢で特に不安や恐怖に深く関わる部位です。


うつ病やPTSDなどの心の病で強い不安や恐怖を感じている方は、扁桃体の活動が活発になりすぎてストレスへ過剰反応しやすくなっているといわれています。


マインドフルネスストレス低減法を実践し、扁桃体の体積が減少すると扁桃体の活動が低下するため、ストレスに対して不安や恐怖を感じる度合いが少なくなるのです。


つまり、マインドフルネスストレス低減法を実践することで扁桃体の活動が低下し、ストレスへ過剰反応しにくくなることを意味します。



マインドフルネス瞑想はデフォルトモード・ネットワーク(DMN)にも影響を与える


マインドフルネスは、デフォルドルフモード・ネットワーク(DMN:Default Mode Network)と呼ばれる脳の働きに対しても影響を与えるといわれています。


デフォルトモード・ネットワークとは反芻する思考と関連が深い脳の働きです。


マインドフルネス瞑想が反芻する思考であるデフォルトモード・ネットワークを鎮める効果があるとの報告もあるため、ここではデフォルトモード・ネットワークとは何か、マインドフルネス瞑想がデフォルトモード・ネットワークに与える影響について解説します。


脳のネットワークのイメージ


 DMNとは自動車のアイドリング状態のようなもの


デフォルトモード・ネットワークとは、ぼんやりと休んでいるときに活性化される脳の神経回路のことです。


自動車に例えると、アイドリング状態のようなものです。

自動車と同じように、脳も活動が完全に停止すると、活動を再開し集中力を発揮するまでに時間がかかってしまいます。

デフォルトモード・ネットワークの働きにより、突発的な出来事に対して瞬時に反応できる状態を維持することができているのです。


 不安などの感情が強くなる


デフォルトモード・ネットワークが活性化している「ぼんやりとしている状態」「心がさまよっている状態」を「マインドワンダリング」と呼びます。


マインドワンダリングのときに、人は不安や恐怖などの感情を引き起こすような思考を繰り返す(反芻する)ことで余計にそれらの感情を強めてしまうことが多いのです。


反芻により不安や恐怖などの感情を強くさせないためには、デフォルトモード・ネットワークの働きを低下させ、マインドワンダリングを起こしにくくするのが効果的です。


2011年にイエール大学で行われた「瞑想の経験が、デフォルトモード・ネットワークの活性と接続に関わっている(Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity)」の研究によると、マインドフルネス瞑想を実践することでデフォルトモード・ネットワークに関連した脳の後帯状皮質と前頭前野の活動を抑えられることが明らかになっています。


これにより、マインドフルネス瞑想がデフォルトモード・ネットワークの働きを弱め、思考の反芻が起こりにくくすることにより感情の安定に良い効果をもたらしてくれるのです。


 脳が疲労しやすくなる


ある論文(Raichle, Marcus E. “The Brain’s Dark Energy” Scientific American 302.3(2010): 44-49.)では、デフォルトモード・ネットワークのエネルギー消費量は脳の全エネルギー消費の60〜80%を占めると報告されており、脳疲労の大きな原因となっていると報告されています。


これに対し、意識的な作業をする際に消費する脳のエネルギーは約5%と書かれていますので、いかにデフォルトモード・ネットワークが脳のエネルギーを消費しているのか理解できるでしょう。


マインドフルネス瞑想を実践することにより、デフォルトモード・ネットワークの働きが過剰にならないようにすることで脳疲労を軽減する効果も期待できます。


 情報が整理され創造力が高まる


デフォルトモード・ネットワークには、脳内の情報整理を行う役割もあります。


脳内の情報が整理されていない状態では、情報をインプットして適切な場面で活用することができません。

散らかった部屋では使いたいときに使いたい物が見つからないのと同じ状態になってしまうのです。


デフォルトモード・ネットワークが正常に働いていると、脳内の情報が整理され、必要なときに適切な情報を活用できる状態になりますので、脳内に蓄積された情報が結びつき、斬新なアイデアを生み出すことができるようになり、創造力が高まるといわれています。


ただしデフォルトモード・ネットワークの働きが過剰になると、不安や恐怖、怒りなどの感情にとらわれてしまいやすくなるため、創造力を高めることも難しくなってしまうことがあります。

マインドフルネス瞑想を実践してデフォルトモード・ネットワークの活動を調整すると、感情のコントロール能力が向上し、創造力を高める効果も期待できるでしょう。



マインドフルネス瞑想の効果


ここからは、マインドフルネス瞑想の効果について紹介します。


マジックアワーのなかでタンポポを掲げる手


 ストレスや不安をやわらげる


マインドフルネス瞑想には、ストレスや不安を軽減する効果があるといわれています。


前述したように、マインドフルネス瞑想やマインドフルネスストレス低減法の実践により、不安や恐怖などの感情を司る扁桃体の活動を鎮めるため、ストレスな状況に対して過剰に反応しにくくなるためです。


 感情をコントロールする能力を高める


マインドフル瞑想を実践すると、記憶や感情の調整に影響を与える脳の部位である海馬の灰白質を増加させるため、不安や恐怖以外にも怒りや悲しみなどの感情をコントロールする能力を高める効果が期待できるといわれています。


マインドフルネス瞑想を実践した方に怒りや悲しみなどの感情をコントロールする能力の向上が認められたという報告やストレスを受けたときの怒りの反応が抑制された[3] 報告などがあります。


さらにマインドフルネス瞑想を実践することにより、「今ここ」に集中し、湧き出てくる感情をそのまま受け入れ、自分の感情を客観視できるようになることが感情をコントロールする能力を高めるのに良い影響を与えているのではないかともいわれています。


 集中力や注意力を高める


マインドフルネス瞑想には、集中力や注意力を高める効果も期待できます。

前述したように、マインドフルネス瞑想をもとに開発されたマインドフルネスストレス低減法を実践した方は、脳の前頭前野と呼ばれる部位の活動が活発になることが報告されています。


脳の前頭前野と呼ばれる部位は、感情のコントロールだけでなく集中力や注意力を司る働きも担っているため、前頭前野の働きが活性化すると集中力や注意力を高めることができるのです。


ビジネスの分野では、集中力や注意力を高める効果を期待してマインドフルネス瞑想を活用する方が多いでしょう。

さらにデフォルトモード・ネットワークが適度に働く状態を保つことにより、創造性を高める可能性もあります。



まとめ


この記事では、マインドフルネス瞑想が脳に与える影響について解説しました。

現在ではマインドフルネスに関する研究が多数行われており、脳科学的にもその効果が証明されています。

よって、マインドフルネス瞑想は信頼できる方法であると言っても過言ではないでしょう。


マインドフルネス瞑想は、日常生活に取り入れやすい点も特徴です。

マインドフルネス瞑想を正しい方法で実践し、生活の質を高めていきましょう。


ZAFは、科学的にも脳への効果が証明されている坐禅・瞑想・マインドフルネスをより多くの方が実践し、自己の存在と向き合い、よりよい社会を目指すためのブランドです。

僧侶が坐禅で使用する伝統的な仏具である「坐禅蒲団(ざぜんぶとん)」を現代のライフスタイルに合うようにリデザインしました。


初心者でも手軽に正しい瞑想姿勢をつくれる瞑想クッションを活用して、瞑想による効果を満喫しましょう。






 


Mindfulness meditation reduces anger, defensiveness, and Arch, J. J., Eifert, G. H., & Craske, M. G. (2014)  arousal in response to provocation: A randomized controlled trial 

Behavior Therapy, 45(2), 271-282.

Comentários


Os comentários foram desativados.
bottom of page